STN Laser

2026年6月品質実証

塗装前処理(足付け・粗面化)をレーザーで — 塗装の密着を上げるアンカーパターン形成

塗装が剥がれるのは、たいてい下地の密着不足が原因です。塗料が食いつく「足場」がない、酸化膜や油が残っている——。レーザーなら、狙った粗さのアンカーパターンを作り、酸化膜の除去と脱脂まで一工程で。塗る直前に清浄な下地を整えられます。

なぜ塗装は剥がれるのか

塗装が剥がれる原因は、塗料そのものより下地の密着不足にあることがほとんどです。足場となる粗さがない、黒皮や酸化膜が残っている、油膜が残っている、旧塗膜が中途半端に残っている——このいずれかで母材との密着が足りないと、せっかく良い塗料を使っても早期に剥がれたり膨れたりします。原因はだいたい次のどれかです。

  • 足場がない — 平滑すぎる面は塗料が機械的に噛まず、密着が弱い
  • 酸化膜が残る — 黒皮(ミルスケール)や酸化膜の上に塗ると、のりが弱くなる
  • 油膜が残る — 加工油や防錆油が残ると、塗料をはじいてしまう
  • 旧塗膜が残る — 塗り替えで古い塗膜が中途半端に残ると、層から剥離する

逆に言えば、「適切な粗さ(足付け)を付け、酸化膜と油を取り除いて清浄にする」——この前処理を丁寧にやれば、塗装は長持ちします。粗さ(粗度)が塗装の付着力を左右するからです。

塗装前処理(足付け・粗面化)とは

塗装前処理とは、塗料が食いつくための下地づくりです。具体的には、表面に細かな凹凸(アンカーパターン)を作る「足付け」と、酸化膜・油を取り除く「清浄化・脱脂」。この二つがそろって、はじめて塗料がしっかり密着します。

レーザーが効くのは、この足付け・清浄化・脱脂を一つの工程でこなせる点です。しかも処理した直後の面は活性化した清浄な状態になるので、間を空けずにそのまま塗装に移れます。前処理と塗装を直結できるのが、現場での強みです。

塗装の密着は、下地の「粗さ」と「清浄度」で決まります。レーザーは、狙った粗さの足付けと、酸化膜・油の除去を一工程でこなせるため、塗る直前の下地づくりに向いています。

レーザーで足付けはどう作るのか

レーザーは、出力や走査の条件で表面の粗さを作り込みます。汚れや酸化膜を飛ばしながら、塗料が噛むアンカーパターンを面に付けていく——研磨材を当てて削るのではなく、狙った凹凸を作るイメージです。黒皮の上からでも、ステンレスにも対応します。

レーザーで作った塗装下地のアンカーパターン(粗面化)面とRa・Rzの実測値
塗装下地の足付け — 塗料が食いつくアンカーパターンを面に付与(Ra・Rzを実測)

必要な粗さ(Ra・Rz)はどこまで制御できるか

足付けの粗さは、後で塗る塗膜の厚みや用途で変わります。レーザーは、その粗さを段階的に作り分けられるのが強みです。きれいに見せたい精密なアンカーはパルス機(Rz+0〜40ほど)、深い粗さが要る面はCW機(Rz+40〜170ほど)、と使い分けます。

塗装下地向けに足付けした試験片とRa・Rzの実測値
足付けの作り分け — Ra・Rzを狙い値に合わせて制御

実際の試験では、素地のRz30から73・107・142へと段階的に粗さを作り込めることを、粗さ計で測りながら確認しています。最適な粗さは、塗料メーカーの推奨値と、現物でのテスト加工で決めるのが確実です。素地調整のグレード(除錆度)の考え方はケレン・除錆度(Sa)ガイドもあわせてご覧ください。

塗装剥離(旧塗膜除去)との違いは

混同しやすいのが「塗装剥離」との違いです。塗装剥離は、すでに塗られている古い塗膜を取り除く加工。塗装前処理は、清浄な母材に「これから塗る塗料の足場」を作る工程です。目的が逆向きとも言えます。

剥離から足付けまでを一本の流れに

塗り替えの現場では、両方が必要になります。レーザーなら、同じラインでCW機による旧塗膜の剥離 → パルス機による酸化膜除去・脱脂・足付け、と連続してこなし、塗り替えの下地を仕上げられます。旧塗膜の除去そのものは塗装剥離ガイドで詳しく解説しています。

関連:塗装剥離ガイド/溶射の下地づくりは溶射下地の現場施工をご覧ください。

ブラスト・サンディングと何が違うのか

塗装の足付けで使われる工法を、粗さの制御・段取り・密着といった観点で並べます。

比較項目レーザー(足付け)ブラストサンディング
粗さの制御Ra・Rzを狙い値で再現(パルスRz+0〜40/CW+40〜170)研磨材の番手で決まるばらつきやすい
仕上がりの均一さ打痕がなく均一打痕が残りやすいムラ・傷が出やすい
清浄化・脱脂酸化膜除去・脱脂を同時にこなす別途脱脂が必要別途脱脂が必要
廃棄物研磨材が出ない研磨材が産廃になる研磨粉が出る
養生・段取り簡素・集塵しやすい養生・集塵設備が要る粉塵対策が要る
処理スピード広い面はブラストに及ばない速い中程度
自動化ロボット連携しやすい難しい難しい

正直なところ — 速度と再現性のトレードオフ

広い面をとにかく速く粗化したいなら、処理スピードはブラストに分があります。レーザーが活きるのは、「狙った粗さを再現性高く付けたい」「研磨材や養生の段取りを減らしたい」「脱脂まで一工程にしたい」「ロボットで自動化したい」といった場面です。速度ではなく、品質の安定と段取りの軽さで選ばれます。

おすすめ機種

精密な足付け・現場 → ST-P-200-AIR(200W MOPAパルス・AC100V)

細かいアンカーパターン(Rz+40まで)の付与に向くパルス機です。酸化膜除去・脱脂・足付けを同時にこなし、AC100Vで動く空冷機なので電源工事なしで現場へ持ち込めます。

大面積・深い粗さ → ST-CW-2000-W(2000W CW・水冷)

深い粗さ(Rz+40〜170)が要る面や、広い面の足付けに。走行装置やロボットと組み合わせれば、量産的な前処理ラインにも対応します。

後で塗る塗膜の厚みや板厚で、向く方式(パルス/CW)が変わります。出力・方式・形態の選び方の基本は、選び方ガイドにまとめています。

よくある質問

塗装前処理(足付け・粗面化)とは何ですか?

これから塗る塗料がしっかり食いつくように、母材表面に細かな凹凸(アンカーパターン)を作り、同時に酸化膜や油を取り除いて清浄にする工程です。塗装の密着は、この下地の粗さと清浄度で決まります。レーザーは、粗さを付ける・酸化膜を取る・脱脂する、という3つを一つの工程でこなせるのが特長です。

ブラストとの違いは何ですか?

ブラストは研磨材の番手で粗さが決まり、打痕が残りやすく、研磨材の在庫・産廃・養生・集塵設備が必要です。レーザーは条件(パラメータ)を変えるだけでRa・Rzを狙った値に再現でき、研磨材を使わないので産廃が出ず、養生も簡素にできます。ただし、広い面を一気に粗化する処理スピードはブラストに及びません。狙った粗さの再現性・段取りの軽さ・自動化のしやすさが、レーザーの持ち味です。

必要な粗さ(足付け)はどれくらいで、どこまで制御できますか?

後で塗る塗膜の厚みや用途で、求められる粗さは変わります。レーザーは、パルス機で細かい足付け(Rz+0〜40ほど。きれいに見せたい精密なアンカーはパルス向き)、CW機で深い粗さ(Rz+40〜170ほど)と作り分けられます。実際の試験では、素地のRz30から73・107・142へと段階的に作り込めることを粗さ計で確認しています。最適な粗さは塗料メーカーの推奨と現物のテストで決めます。

塗装剥離(旧塗膜の除去)とは違うのですか?

違います。塗装剥離は、すでに塗られている古い塗膜を取り除く加工です。塗装前処理は、清浄な母材に「これから塗る塗料の足場」を作る工程です。レーザーは、同じラインでCW機による旧塗膜の剥離から、パルス機による酸化膜除去・脱脂・足付けまでを連続して行い、塗り替えの下地を仕上げることもできます。

対応材質は?塗装の密着は本当に上がりますか?

黒皮(ミルスケール)の上からでも施工でき、ステンレスにも対応します。粗さが付着力を左右するため、足付けと清浄化で塗装の密着を高められます。付着力の向上は、共同研究(UBEマシナリー・山口大学)でも確認されています。ただし、材質・塗料・要求される性能によって結果は変わるため、ワークに合わせた条件出し(無料デモ)で確認するのが確実です。

まとめ

  • 塗装が剥がれるのは下地の密着不足が原因 — 足場(粗さ)と清浄度が鍵
  • レーザーは足付け・酸化膜除去・脱脂を一工程でこなせる
  • 粗さはパルスでRz+0〜40、CWでRz+40〜170と作り分けられる
  • 塗装剥離(旧塗膜除去)とは目的が逆 — 剥離から足付けまで一本の流れにできる
  • 広い面の速度はブラスト優位、粗さの再現性・段取り・自動化はレーザー優位
  • 黒皮の上から・ステンレスにも対応。最適な粗さはテスト加工で確認

塗装の密着でお困りでしたら、実際のワークでの無料テスト加工で、付与できる粗さと仕上がりをご確認いただけます。お気軽にご相談ください。

関連記事:塗装剥離ガイド溶射下地の現場施工ケレン・除錆度(Sa)とは溶接前処理ガイド

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