STN Laser

2026年6月現場実績

溶射下地の現場施工をレーザーで — 素地調整・粗面化をブラストなしで

溶射皮膜の寿命は、下地で決まります。供用中の鉄塔・橋梁・水門は工場に持ち込めず、研削材を出せない高所や狭所も少なくありません。レーザーなら本体を据え置いたまま、軽いヘッドだけで素地調整と粗面化(アンカーパターン形成)を一工程でこなせます。

溶射下地の現場施工はなぜ難しいのか

溶射下地の現場施工が難しいのは、供用中の鉄塔・橋梁・水門を工場に持ち込めず、研削材を回収できない高所・狭所が多いからです。下地に汚れや酸化膜が残れば溶射は密着せず、粗さが足りなければアンカー効果も出ません。その肝心の下地処理を、足場の悪い現場でやり切らなければならない点が壁になります。

溶射の良し悪しは、吹き付ける前の下地でほぼ決まります。既設の鋼構造物は、撤去できない送電鉄塔や水に浸かる水門のように、工場へ運べないものばかりです。

そして現場には、工場の前処理にはない壁があります。

  • 研削材を回収できない — 桁端部・塔上・水門の飛沫帯など、高所や狭所では飛散した研削材を集められない
  • ブラストの段取りが重い — コンプレッサなど大型機材の搬入、研削材の産廃化、市街地では板張防護と遮音が要る
  • 動力工具では品質が足りない — 2種ケレン止まりだと、溶射皮膜がはく離して全面腐食につながる
  • 塩分が残ると早期に劣化 — 沿岸や海上の構造物では、付着塩分が返り錆の引き金になる

「現場でできて、研削材を出さず、溶射が密着する粗さまで作れる」。この三つを同時に満たす下地処理が求められてきました。

レーザーで下地処理はどう変わるか

レーザーは、光のエネルギーで表面の錆・旧塗膜・酸化膜を飛ばし、同時に金属面を狙った粗さに整えます。研削材を当てないので、出る廃棄物は除去した対象物だけ。集塵機で回収すれば、足元に研削材が溜まりません。

もう一つの利点が、付着塩分の同時除去です。表面の塩分はレーザーの熱で飛ぶため、返り錆を抑えた下地に仕上がります。素地調整は皮膜寿命を大きく左右する工程で、ここを丁寧に作れるかどうかが、溶射や塗装の持ちを決めます。

素地調整は塗膜・溶射皮膜の寿命を左右する重要な工程です。レーザーは旧塗膜・錆・酸化膜の除去と、粗面化、付着塩分の除去を一つの工程でこなせるため、現場での下地づくりに向いています。

必要な粗さ(Rz)はどこまで作れるのか

溶射に必要な粗さは、レーザーで段階的に作り込めます。素地のRz30から、Rz73・107・142といった値まで、出力や走査の条件を変えながら粗さ計で実測して狙い値に寄せていけます。溶射でアンカー効果を出すには相応の粗さが要りますが、その作り分けができる点が、現場での下地処理に向いている理由です。

レーザーで段階的に作った粗さ(Rz)の試験パネルと粗さ計の実測
素地Rz30から段階的に粗さを作り込んだ例(Rz73〜142を粗さ計で実測)
塗装下地向けに足付けした表面とRa・Rzの実測値
塗装下地の足付け — Ra・Rzを狙い値に合わせて制御

素地調整のグレード(除錆度)の考え方はケレン・除錆度(Sa)ガイドで詳しく解説しています。

本当にブラスト同等の防食性能が出るのか

ブラスト同等の防食性能は、共同開発の実証で確かめられています。レーザーで素地調整した面に金属溶射した試験片は、複合サイクル試験を2,160時間(270サイクル)続けても外観に変状が出ず、ブラスト下地と同等の結果でした。一方、動力工具で仕上げた下地は溶射皮膜がはく離し、全面腐食に至っています。粗さが作れても防食性能が伴わなければ意味がない、という観点での裏付けです。

レーザー素地調整+金属溶射と他工法の防食性能を比較した試験パネル
試験結果の例 — レーザー+溶射は全体的に健全、動力工具仕上げは皮膜はく離からの腐食
レーザー素地調整後に金属溶射した試験パネル(健全)
レーザー素地調整+溶射 — 試験後も全体的に健全
動力工具で仕上げた下地に金属溶射した試験パネル(皮膜はく離)
動力工具仕上げ+溶射 — 皮膜はく離からの腐食

高所・狭所の現場でどう使うのか

現場で効くのは、本体とヘッドを切り離せる構造です。重い本体は地上や足場に据え置き、作業面へ持っていくのは1.9kgほどのヘッドだけ。ファイバーで光を10m先まで送れるので、人が研削材を回収できない場所にも処理を届けられます。

現場で活きる場面

漏水で腐食が集まる桁端部や支承まわり、送電鉄塔の塔上や地際、水門の飛沫帯。いずれも研削材を回収しづらく、ブラストの段取りが組みにくい場所です。軽いヘッドと磁石式の治具なら、こうした狭所・高所でも下地処理を進められます。電源の確保が条件になるため、現場の電源事情はあらかじめ確認します。

水門やタンクのように内面・狭所が絡む構造物では、塗膜剥離や溶接後処理まで含めた進め方を水門・タンク・製缶の前処理で解説しています。

従来工法と何が違うのか

溶射の下地づくりで使われる工法を、現場で効く観点で並べます。

比較項目レーザー素地調整オープンブラスト動力工具ケレン(2種)
研削材・2次廃棄物出ない(除去対象物のみ)研削材がそのまま産廃に出ない
粉塵集塵で回収しやすい大量・回収が難しい中程度
騒音低い大きい中程度
養生簡素板張防護+遮音が必要中程度
高所・狭所・回収不能部本体据置+軽量ヘッドで対応研削材を回収できず困難届くが品質が不足
溶射下地としての品質ブラスト同等を実証良好(基準)皮膜はく離につながりやすい
広い面の一括処理部分補修向き得意
付着塩分熱で同時に除去残りやすい(再付着)残りやすい

使い分けの目安

広い面を一気に仕上げる新設工事では、ブラストの処理速度に分があります。レーザーが活きるのは、研削材を出せない・養生を簡素にしたい・狭所や高所が多い、といった部分補修や現場補修です。動力工具仕上げでは溶射がはく離しやすいため、品質を担保したい下地ほどレーザーの価値が出ます。

おすすめ機種

溶射下地は要求粗さと処理面積で機種が分かれます。出力・形態を含めた全体の選定は現場施工向けの機種選びもあわせてご覧ください。

溶射下地の中核 → ST-CW-2000-W(2000W CW・水冷)

溶射が求める深い粗さの領域まで作り込めるCW機です。本体据置+約1.9kgのヘッド+10mファイバーで、高所・狭所の下地処理に向きます。防食性能の実証もこの出力帯で確認しています。

大型構造物・広範囲 → ST-CW-3000-W/ST-CW-6000-W + 走行装置

橋梁や大型タンクなど、処理面積が大きい現場には高出力のCW機と走行装置の組み合わせを。少人数で広い面の下地処理を進められます。

現場調査・局所補修 → ST-P-100-AIR(100W パルス・AC100V)

約10kgでAC100V対応のポータブル機。現場調査時の試し処理や、ボルトまわり・小面積の足付けに。電源さえあれば持ち込めます。

よくある質問

レーザーで溶射が密着する粗さは本当に出ますか?

出ます。素地のRz30から、Rz73・107・142といった段階まで、粗さ計で実測しながら作り込めます。溶射の要求に合わせて粗さを狙い、共同開発の実証データでも防食性能を確認しています。実際の対象物では、テスト加工で必要な粗さに届いているかを確認してから本施工に入ります。

ブラスト(1種ケレン)の代わりになりますか?

部分補修や狭所、研削材を出せない現場では代わりになります。動力工具による2種ケレン仕上げでは溶射皮膜がはく離することがありますが、レーザー素地調整はブラストと同等の防食性能を実証しています。一方で、広い面を一気に処理する場面はブラストが速く、適材適所で使い分けます。

送電鉄塔の塔上など、高所でも使えますか?

使えます。本体を地上や足場に据え置き、作業面へ運ぶのは1.9kgほどのヘッドだけです。ファイバーで光を10m先まで送れるため、塔上・桁端部・水門の飛沫帯のように研削材を回収できない場所でも、電源さえ確保できれば作業できます。磁石式の治具で対象に固定しながら処理することもできます。

素地調整は塗装・溶射の寿命にどれくらい効きますか?

素地調整は皮膜寿命を左右する大きな要素です。土木分野の研究では、塗膜寿命への寄与が半分を超えるという報告もあります。表面に残った塩分は返り錆の原因になりますが、レーザーは下地を整えながら付着塩分も同時に飛ばせるため、長持ちする下地づくりに向いています。

CWとパルス、どちらを使いますか?

深い粗さが要る溶射下地はCW機が向き、酸化皮膜の除去や脱脂、精密な足付けはパルス機が向きます。要求される付着力に合わせて、CWとパルスを使い分けたり組み合わせたりします。どちらが適するかは、対象物と要求粗さを伺ったうえでご提案します。

まとめ

  • 溶射の寿命は下地で決まり、既設構造物では下地処理も現場でやるしかない
  • レーザーは研削材を出さず、素地調整・粗面化・付着塩分の除去を一工程でこなせる
  • 粗さはRz30から段階的に作り込め、溶射の要求に合わせて狙える
  • 複合サイクル試験2,160時間でブラスト同等の防食性能を実証(動力工具仕上げははく離)
  • 本体据置+約1.9kgのヘッド+10mファイバーで、高所・狭所の現場に届く
  • 広い面の新設はブラスト、研削材を出せない補修現場はレーザーと使い分ける

既設の鉄塔・橋梁・水門の下地処理でお困りでしたら、実際の対象物での無料テスト加工で、到達できる粗さと仕上がりをご確認いただけます。お気軽にご相談ください。

関連記事:ケレン・除錆度(Sa)とは橋梁のレーザークリーニングとNETISNETISと公共工事3工法比較

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